企業間でPERやPBRを比較する意味は?

こんにちは、ゆうゆーです。

これは議論を呼ぶテーマかもしれませんが、私の考えを書くことにします。

ある企業の割安さを調べる際に、同業他社と(PER、PBRなどを)比較して検討している方をまれに見かけます。一見、低いPERに見える企業も同業他社のPERを調べるとさらに安かったりして、実はその業界全体として低PERであることが分かり、元々見ていた企業は「実は割安でなかった」という結論になっていたりします。

ただ、私は投資銘柄、あるいは投資候補銘柄のPERを、同業他社のPERと比較することで割安さを測ったりはしません。PERはあくまでその企業の絶対的価値と見比べて割安か割高かを判断するためにのみ使っており、他社のそれと比較することに意味はないと思っています。

1.PERの単純比較は無意味
これはほとんどの方が納得できることだと思いますが、同業他社とPERを単純比較することは無意味だと思っています。

私は常々、株式投資はショッピングと同じだと考えており、株を買うことはスーパーで肉を買ったり、デパートで服を買ったり、家電量販店で空気清浄機を買ったりするのと同じです。株式投資の場合、対象が「企業」というだけの話です。
参考記事:株式投資という名のショッピング

空気清浄機を買う時に、いろいろな機種がある中でただ値段だけを見て、安いものが割安だと思う人はいないでしょう。空気清浄機という括りは同じでも、メーカー、消費電力、音の大きさ、機能の違い、デザイン、保証の充実度等、いろいろなスペックが異なるから値段も違うのは当たり前です。

株式投資もそれと同じで、ただ「同じ業界」というだけで成長性、財務安全性、技術力、知名度、経営者の能力などさまざまな要素が異なるものを、PERだけを見て比較することは馬鹿らしいと思っています。

これはつまり、BS11とフジテレビのPERやPBRを比べてどちらが割安かと論じたり、エスクリとワタベウェディングで同じ比較をすることは無意味だということです。
仮にこれで割安さが判断できるのなら、トレファクから買取王国へと今すぐにでも乗り換えますけどね。


2.各要素を加味したとしても、企業間での割安さの比較は疑問
先ほど、「同じ業界」というだけで成長性、財務の安定性、技術力、知名度、経営者の能力などさまざまな要素が異なるものを、PERだけを見て比較することは馬鹿らしい、と言いました。

では、それらの要素を全て加味した上で、PER、PBRといった指標を同業他社と比較するのなら意味があるのでしょうか?例えば、成長性、財務などの要素全てを加味した上で、トレファクと買取王国のどちらが割安かを考えることです。
これなら、トレファクの方がPERが高いからといって一概に割高だとは言えませんから、意味がある気もします。

しかし私は、こういう比較さえも不要だと考えています。
空気清浄機の例で言うなら、いろいろな機能の違いを踏まえた上で価格の差を見て、どちらの空気清浄機を買うべきかを判断する方法です。これはみんなよくやる行為で、割安さを測るには一見正しい方法に見えますが、これは本当の買い物上手ではありません。

なぜか?

極端な例になりますが、上の方法で「割安だ」と判断した方の空気清浄機が100万円だったら、みなさんは買うでしょうか?たぶん買わないと思います。
なぜ買わないか、それは割高と思うからに他ならないはずです。どのメーカーもそんな空気清浄機しか無いのなら、そもそも空気清浄機なんて買わなければ良いのです。

そうです。本物の買い物上手というのは、「その商品の価値に比べて価格が安いものを買う」ことであり、「他機種と比べて安いものを買う」という視点では、一見得したように感じるだけで実は損をしていた、なんてことはよくある話です。
空気清浄機ではさすがにそこまで価値と価格が剥離した極端な値付けはされないでしょうが、株式市場では時々ある現象です。


以上より、私は(たとえ同業種であろうと)企業同士でPERを比較することで割安、割高を考えることは一切しません。割安、割高は、あくまでその企業の価値(将来的なものも含めて)と価格を比較することのみで判断しています。

そうは言ってもこの先、例えばトレファクから買取王国など、同業他社への乗り換えも無いとは言えません。しかし、それはあくまで「買取王国という企業の価値が、つけられている株価よりも高い」と思うから乗り換えるのであって、「トレファクより安い」から乗り換えるわけではありません。

ニュアンスが少し難しいのですが、たとえ買取王国がトレファクよりは安いと思ったとしても、企業価値と比べて高いと思えば、トレファクは売ったとしても買取王国を買うことはしないでしょう。こう言えば少し分かると思います。


蛇足ですが、2の比較については(私はやらないというだけで)全く投資に役立たないわけでもないと思います。
こういう比較ができるのであれば、例えば(企業間比較で)割安と思う方を買って割高と思う方を空売りすれば、利益に繋げることができますからね。合理性はあると思います。
全体相場の上げ下げにパフォーマンスが左右されないところも、この方法の利点かもしれません。

コメント

No title
安いところを買って高いところを売る、というのは裁定取引ですね。


PERもPBRも基礎指標ですので、それ単体で云々言うことはできません。
基礎指標は基礎としてチェックする必要があります。

まぁ、株価は常にそれなりに理由が付くので、高い安いの判断は人それぞれです。

有形資産、無形資産に対する評価も人によって大きく違います。

割安株投資は浅く広くの分析をし続けなければならず、短期間の株価変動をチェックしなければなりません。やること多くて忙しいです。
Re: No title
MEANINGさん、こんにちは。

裁定取引と言うんですね。こういった手法にあまり興味がなく、単語を聞いたことがある程度でした。

余談ですが、MEANINGさんの言われる割安株投資は「他銘柄に対して割安なものに投資する手法」という意味で、バリュー投資とか成長株投資というのは「(自分の考える)企業価値に対して割安なものに投資する手法」という意味ですよね。やっと何となく分かってきました(笑)

となると、私がやっているのはMEANINGさんの言われる割安株投資ではないですね。割安株投資の場合、(もちろんPERやPBRだけが判断材料ではないことは当然として)この記事に書いた比較は意味があるように思いました。
比較することはないですが
ゆうゆーさん、こんばんは。
比較して買う買わないを決めることはないですが、業種として似たようなperになるというのは、あると思います。
資金の流れや資産の使い方が、どうしても似てしまう。筆頭は銀行かな、と。資金にレバレッジをかけて低い利回りの運用で低per。
なので、業種としてperが低いと感じたときその業種は儲かりにくいんだな、と判断してます。

儲かりにくい
鉄鋼、銀行

読みにくい
商社

株価が乱高下しやすい
ネット関係、ゲーム

ただお菓子ひとつとっても
ブルボンもあればモロゾフもあるし、カルビーなんかと比べても全然違いますし(笑)
Re: 比較することはないですが
すりぃさん、こんにちは。

おおよそのPER水準は、だいたい業種毎にまとまっているように感じますね。ただ、それが(ビジネスの構造などで)納得できるケースもあれば、理由がよく分からないケースもあります。

理由がよく分からず業界全体が低PERになっている場合、それは他でもない投資のチャンスではないかと思っています。この場合はその業界の中のどの銘柄を選ぶかよりも、どれでもいいから(あるいは分散して)持っておくことが大切ですね。

また、ある優良企業が「その業界に属している」というだけで(ビジネスの基本構造は全く違っても)低PERに収まっている場合もあったりします。その場合もチャンスでしょうね。
指標の使い方
ゆうゆーさん、こんばんは。
皆さんこのような指標を熟知されて投資しているんですよね。私は「初心者の株入門」みたいな本の知識しかありません。なので、ゆうゆーさんに質問させていただきながら勉強しています。いつも私の内容の薄い質問に答えていただき、大変ありがたく思っております。
低PERや低PBR、それに財務がよくて・・・と、私も一時そんな銘柄を探していた時期がありました。そこで疑問に思ったのが「スクリーニング」です。これって、同じ考えの人は同じ銘柄に辿りつくんではないか?・・・と。
それ以来、スクリーニングはしません。自分の思い描くストーリーと重なる企業にのみ投資するスタイルになりました。
Re: 指標の使い方
みっちさん、こんにちは。

こちらこそいつもコメントをくださり感謝しています。KeePerラボの現地報告など重宝していますよ。これからも切磋琢磨して投資スキルを伸ばしてゆければいいですね。

ちなみにスクリーニングは悪い方法ではないと思っています。もちろんこれだけで決めてしまうのは心許ないですが、例えば論外の企業を除外する(足切り)などには十分使えるのではないでしょうか。

また、たとえ多くの人がスクリーニングで同じ銘柄に辿り着いても、その銘柄を、株価が微動だにしない時期を乗り越えて何年も持ち続けられる人はそうは居ません。だから、誰が見ても有望な銘柄を持っていても儲けられないということはないと思います。

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