銘柄分析[3280 エストラスト] ※旧手法

こんにちは、ゆうゆーです。

既にお伝えしたとおり、先週は保有銘柄の乗り換えを行いました。
桧家HDを売り、エストラストを購入です。
不動産銘柄から不動産銘柄への乗り換えです。

まず最初に、この会社の事業内容を確認しておきたいと思います。

この会社は、いわゆる分譲マンションのデベロッパーですね。
大手で言うなら三井不動産や三菱地所、住友不動産などと同業です。
このエストラストという会社は、山口県を拠点にして、
「オーヴィジョン」というシリーズのマンションを売り出しています。

実は私、数年前にタワーマンションを購入しており、
その頃にマンションについての知識を詰めまくった経験がありますので、
たぶん、一般人よりは少しマンションには詳しいと思います。

というわけで、今回はエストラストのビジネスについて、
顧客の立場から考えてみたいと思います。

マンションを買いたい人がまず第一に考えることは、立地です。
投資目的の場合は別にして、山口県に住みたい人が探しているのならば、
いくら素晴らしいマンションが福岡県にあっても、見向きもしません。
つまり、ある程度限定された地域から選ばないといけないことになります。
ブランドなども多少は気にするでしょうが、まずは立地です。

しかも一戸建てと違い、マンションは広い土地が必要になりますから、
好きなところにポンポン立てられるものではありません。
ライバル会社が勝負を仕掛けようにも、
近くに空いている土地がなければ勝負もできません。
構造や間取りや設備、あるいは価格に多少の不満があっても、
何かを妥協して、既にある中から選ばないといけないわけです。
これは、すぽさんのブログで言う「地理的独占型」のビジネスモデルになりますね。

前述の通り、私はマンションの検討・購入経験がありますから、
「既にある中から選ばないといけない」という苦悩は体験済みです。

マンションのデベは、ライバル企業との差別化が図りにくい半面、
上記の理由から、ライバル企業との真っ向勝負になる危険性も低く、
悪くないビジネスモデルだと思います。

問題点は、扱っている商品が商品だけに景気悪化にはめっぽう弱く、
この業種の最大の敵は、ライバル業者ではなく景気かもしれません。
そのあたりも加味して考える必要がありますね。

では、過去7年間の売上と経常利益を見てみます。
通常なら営業利益を見るのですが、営業利益の7年分のデータが無いためここでは経常利益を見ます。

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売上、利益ともに右肩上がりで、悪くないですね。

ちなみにこの会社、経常利益ベースでは2006年から7期連続増収増益です。
リーマンショックも増収増益で切り抜けている、長期安定成長株ですね。
成長率も高そうです。

今後の成長余地はどうでしょうか?

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(エストラスト 決算説明資料より)

詳しい説明は不要でしょう。
成長余地は、ゆうゆーの保有企業でもNo.1と言えるくらい残されています。

これはもしかすると、テンバガーまで狙える大物かもしれません。
もう少し細かな経営指標も見てゆきましょう。

売上高営業利益率はここ数年で鮮明に良化してきていて、
今は10%まで上がってきており、なかなか良いですね。
これは同規模の同業他社と比較しても、トップクラスの水準です。

以下は純利益ベースの比較ですが、おそらく営業利益でも同じでしょう。

150.jpg
(エストラスト 決算説明資料より)

利益率の高さは、不況による業績への影響を下げるという意味でも重要です。
参考記事:不況に強い企業

自己資本比率は約20%ということで、急速に良化してきてはいるものの、
まだまだ軟弱ですね・・・。
ただ、これはビジネスモデルを考えるとある程度は仕方がありませんね。
同業他社もだいたいみんな低いです。

ROEは36%ということで、抜群です。
ROAも7%で、これは数字的には可もなく不可もなくといったところですが、
業種を考えれば秀逸だと言えるでしょう。

ただ、この銘柄の最大のネックと思われるのは、
キャッシュ・フロー(以下CF)の悪さです。
ここはちょっと、丁寧に見ておきたいと思います。

フリーCF(営業CF-投資CF)がマイナスではありますが、
これはまだ若い成長株に限っては、私はそんなには気にしません。

成長性の低い株でフリーCFがマイナスだったら要注意ですが、
成長株に限っては、投資CFに将来への投資分が含まれていますから、
仮に成長を止めたと仮定すれば、投資CFのマイナス分が軽くなり、
結果としてフリーCFはプラスになる場合が多いのです。
フリーCFがマイナスだからといって、
何でもかんでも儲からないビジネスだとは言い切れないのです。

ただ、エストラストの場合は営業CFの段階でマイナスです。
これはさすがに印象は良くないですね・・・。

この営業CFのマイナスの原因が、決算説明資料に書かれていました。
「積極的な用地仕入れと事業規模の拡大に伴い、棚卸資産が増えたことが原因」
ということのようです。
これは、私なりに解釈すれば、
「営業活動によりキャッシュはしっかり稼いだのだが、そのお金を使って、
すぐに次の販売用の土地を買った」
ということですね。

・原材料(土地)の価格が非常に高いこと
・原材料(土地)の購入から販売までの期間が非常に長いこと(タイムラグ)

この二点が、営業CFがマイナスになっている主な原因と読めます。
これは業態上やむをえませんね・・・。
少なくとも、事業が行き詰っているとかそのようなことではなさそうです。

さて、次は景気の影響を考えてみます。
不動産業ということで、景気の影響を大きく受けることは間違いありません。
成長株と景気敏感株、二つの側面を併せ持つ会社だと見ておくべきですね。

ただ、前回のリーマンショックは難なく乗り越えてきています。
このことから、不況に苦しむであろう同業他社とは異なり、
不況を乗り切るための「何か」を持っているものと想像できますが、
その「何か」については、残念ながら今のところ分かりません。
これがハッキリ分かれば、もう少し保有比率を増やすことも考えています。

企業分析はここまでです。
次に、割安さを見てみます。

予想PERは7倍を切っており、実に魅力的な水準です。
この株に限らず、今は不動産株全体が低PERに押さえ込まれていますね・・・。

この理由としては、まぁいろいろあるとは思いますが、
一つには「なぜPERはこんなにもバラバラなのか?」で言うところの、
「業界全体の将来性」を、市場が危惧している面があると考えています。
消費増税を筆頭に、不動産業界にとっての不安材料が満載ですからね。

ただ、これはあくまで業界全体としての話であって、
その中でうまくやっている企業があれば、それは素晴らしい投資対象です。

人気業界の人気企業は避けた方がよい。
冷え切った成長性の乏しい業界でうまくやっている企業への投資は、
往々にしてよい投資結果に結びつく。
【ピーター・リンチ】


割安さに関しては、全く問題ありません。
エストラストの命運は、一にも二にも次の不況を無傷、または軽傷程度で
乗り越えられるかにかかっている気がします。
リーマンショックを乗り越えたように、次の不況を無事に乗り越えた頃には、
企業の成長と共に株価もきっと大上昇を終えていることでしょう。

数年後、エストラストもこんな感じのチャートになっていれば最高ですね。

総合すると、ここはハイリスク・ハイリターンな投資先だと見ています。
とは言っても、リスクよりもリターンの方がはるかに高いと思っているので、
ハイリスク・超ハイリターンと言った方がよいかもしれませんね。

こんな一見リスキーな投資先は、候補から外される方も多いと思いますが、
「馬鹿とハサミは使いよう」という言葉があるように、
ハイリスク・超ハイリターンの銘柄も、結局は使いようなのです。

ハイリスク・超ハイリターンの銘柄を、
ミドルリスク・ハイリターンの銘柄に変身させることは、簡単です。

2分の1の確率で倒産、2分の1の確率で10倍高という銘柄が、
10万円で売られているとします。
エストラストはこんな銘柄かもしれない・・・。
こんな銘柄を、現金20万円を用意した上で10万円分だけ買えば、
最悪でも資金は50%減に留まる一方で、うまくいけば5倍以上に増えます。
40万円用意すれば、ローリスク、ミドルリターンにだってできます。
現に、今回の乗り換えで現金の保有比率が増えましたから、リスクは下がったと言えます。

要は、リスクが高い投資先であることをちゃんと分かっていて、
対策を打っていれば、何も問題はないのです。

リスクとは、自分が何をやっているかよくわからないときに起こるものです。
【ウォーレン・バフェット】


エストラストやエスクリを、アサンテと同じように考えてはいけないのです。
アサンテは倒産など有り得ないでしょうが、10倍高も有り得ません。

私のポートフォリオには複数の銘柄を組み入れていますが、
「成長株」という括りは同じでも、銘柄ごとに特徴は異なります。
たまにこのブログにもコメントをくださる胡悠さんは、
保有株をディフェンス株、オフェンス株などと分類しているようですが、
こうやって分類できるということは、
保有銘柄それぞれの特徴を理解している証拠ですよね。

私がエストラストという銘柄をポートフォリオに少量組み込んだ理由、
今回の記事でご理解いただけたのではないかと思います。

何をどんな理由で保有しているのか知る必要がある。
「大丈夫、この株は上がる」という根拠のないアプローチは当てにならない。
【ピーター・リンチ】



[2014.4.10 追記]

当記事での銘柄分析は、旧手法によるものですのでご注意ください。
新手法[私の投資方針と投資基準]による分析は、近日公開予定です。

コメント

とても参考になりました
ブログ拝読しました。
わかりやすい分析でとても参考になり、本銘柄への自信をさらに深めることができました。
エストラストは月次の売上げ等は公表していませんが、スタッフブログである程度の進捗が確認できるのも良い点だと思っています。

また、ブログの中で言及していただきありがとうございます。ただゆうゆーさんほど徹底分析しているわけではありませんので、「特徴を理解している」と言われると面映いですが。

Re: とても参考になりました
胡悠さん、こんにちは。

銘柄分析も、徹底的にやればやるほど良いというものでもなく、
肝心な部分だけを見て、パッと決めてしまった方がよい結果になることも
意外と多いんですけどね。
後で見直して、不要な部分まで踏み込んでいる気がしないでもないです。
まぁ、あくまで参考程度に捉えていただければと思います。

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