銘柄分析[2196 エスクリ]

こんにちは、ゆうゆーです。

最後の保有銘柄、エスクリについても分析しておきたいと思います。
まず、簡単に事業内容を確認しておきます。

エスクリは、「ラグナヴェール」をはじめとした様々なブライダル施設を全国各地に展開し運営している、成長著しい企業です。
駅チカ・駅ナカに特徴を有しており、施設や結婚式のスタイルは限定せず、ハード面(施設)よりもソフト面(人)で勝負しています。

では、「私の投資方針と投資手法」に従って分析してゆきます。



ステップ1:『今後安定して成長すると思われる企業』であるか?
A.成長ストーリーは存在するか?
この会社も、「エリア拡大型」の成長ストーリーを持っています。
一施設あたりで利益を出すためのノウハウは既に持っていますから、あとは式場やバンケットを増やせば増やすだけ、業績も伸びてゆきます。

以下は、過去7年間の売上高、経常利益、バンケット数の推移です。

194.png
※売上高および経常利益は、エスクリ単体のデータを使用しています。

バンケット数と売上高と経常利益、全て見事に連動していますね。この成長ストーリーで、10期連続増収、8期連続増益を達成しています。

B.成長ストーリー崩れの三大要因に対し、耐性を持っているか?
1.成長限界に対して
エスクリのブライダル施設は現在、全国に13箇所しかありません。常識で考えても、これ以上出店する場所がないはずがありませんね。

また、ブライダル市場全体に対するエスクリのシェアを見てみても、まだたったの1%に過ぎず、成長限界については問題ないと考えてよいでしょう。
「ブライダル市場全体が縮小傾向だから、エスクリも今後は成長できない」などと思われている方がたまにいるのですが、エスクリ程度のシェアで市場全体を気にする必要など、全くないと思います。

2.景気悪化に対して
不況に強い三要素である、低価格品、必需品、消耗品に関しては、エスクリには必需品が当てはまるでしょう。
不況だからという理由で、結婚式や披露宴を挙げない新郎新婦など、おおよそいるとは思えませんからね。いくら景気が悪くとも、ご祝儀の額をケチる人などいないという伝統も、エスクリの不況耐性には追い風です。

低価格品や消耗品は当てはまりませんが、必需品の要素が相当強いため、不況に強い事業内容であることはおそらく間違いないと思います。
もちろん、リーマンショックも難なく増収増益で乗り切っています。

3.他社との競争激化に対して
ブライダル企業は既に全国に飽和状態であり、成熟した産業と言えます。ライバルも多数存在し、これらからシェアを奪っていくことができなければ長期的な安定成長は望めません。

正直、エスクリの競争力を語る上での物的証拠は見つかりません。
会社側の説明では、立地の良さやソフト面などが挙げられていますが、これだけではちょっとよく分からないな・・・という印象です。
ただ、状況証拠を積み重ねて精度の高い推測をすることはできそうです。

まず、成約率の業界平均が30%程度であるのに対し、エスクリの成約率は40%を超えている、という点に着目すれば、同社は成約率を上げるためのノウハウを持っていると考えられます。

また、長期安定成長を達成していることにも着目してみます。
通常、安定成長を目指せるおいしい事業はすぐに他社に真似をされ、その成長が長期間続くことはあまりありません。それが長期間続いているということは、他社が容易に真似できないようなノウハウを有していると考えられます。

さらに、エスクリの経営者の岩本さんは、かの有名な結婚情報誌「ゼクシィ」の創刊を手掛けた人物でもあります。当然、ブライダル業界を知り尽くした人物ですので、この業界で勝ち残るためのノウハウを有していると考えられます。

以上のような状況証拠を積み重ねれば、その中身までは分からないながらも、「おそらく、競争に勝ち残れるだけのノウハウを同社は持っているだろう」と推測できるのです。

C.もしも成長が失敗に終わった場合のリスクはどの程度か?
自己資本比率は25%と極めて低く、借入金もかなり大きくなっており、増資のリスクも低くはなさそうな気がします。
収益性は普通ですが、成長と共に伸びている印象はあまり受けません。
キャッシュ・フローはだんだんと改善されてきています。

財務はお世辞にも強いとは言えず、私が投資家ではなく銀行だったら、この会社にお金を貸すのはちょっと躊躇してしまいますね。
リスクは「高い~極めて高い」と判断します。

ステップ2:『割安な価格』であるか?
まずは、PERの適正水準を決めます。
過去の実績およびROE水準から、成長率を20%と想定しますので、仮のPER適正水準は16.0倍~24.0倍となりますが、リスクが高い~極めて高いことを考慮し、適正水準を15%引きにします。

従って、この銘柄のPER適正水準は、13.6倍~20.4倍 となります。

現在の、この銘柄のゆうゆー予想PERは8.2倍(会社予想は7.4倍)ですので、今の株価は割安も割安、大バーゲン価格であると判断できます。



以前から「この銘柄はハイリスク・ハイリターンだ」と言ってきましたが、それはあくまで企業の業績に着目した場合です。
今の株価は、そのハイリスクを織り込んで余りあるほどの割安水準であり、株価下落という意味では、そんなにリスクは高くないような気もします。

なぜ今の株価がこんなにも安いのか、私には理解できません。おそらく「自己資本比率25%」に市場が恐れているのだと思いますが・・・。

改めて分析してみて、とても期待できる銘柄だと再確認できました。
今後、別の銘柄を売却して現金が余るようなことがあれば、真っ先にエスクリを買い増しの候補に入れたいと思います。

注  記
当記事の内容はこれを書いた時点での私の見通しであり、現時点での見通しは変わっている可能性がありますので、ご注意ください。

コメント

No title
ウエディング事業は売上高500億円が上限になっています。
高収益な立地を厳選するとどうしてもこうなってしまうのでしょう。
同業他社を見ればこれは明らかです。
500億円の壁を突破しようと地方に出店したT&Gは失敗したので、同業他社は500億円で出店を止めていますね。

エスクリの場合、商圏を都市圏に絞っており、これが高収益の源泉ですが、その分出店余地は限られており上限に達するのも早いと思われます。
これは平成26年3月期 決算説明資料からも読み取れますね。

ウエディング事業は同業他社に対する優位性を持つのが困難であり、頑張って差別化を図れば図るほど出店余地が小さくなるという欠点があります。
これを理解した上で投資をすることが大切だと思います。
Re: No title
AKIさん、こんばんは。

>エスクリの場合、商圏を都市圏に絞っており、これが高収益の源泉
と書かれていますが、私はそもそもこのようには考えていません。
これが高収益の源泉であるなら、とっくに他社も真似しているはずですし、
その結果、激戦となって結局そこでは高収益は生まれないでしょう。

エスクリの本当の強さは、立地ではないと私は考えています。
(もちろん、立地のメリットがゼロというわけではありません)

結婚式場に関わらず、どんな店舗も立地が良い方がいいに決まっていますが、
「立地が良い」というだけの優位性で長期安定成長を遂げている企業など、
存在するのかと言われれば、存在しないと思います。
他社が容易に真似できることを、競争優位性とは言いません。

では、エスクリの競争優位性はいったい何なのか?
それは、私にはハッキリとは分かりません。(と、記事でも書きました)
なので、状況証拠を積み重ねて競争優位性の存在を立証しているわけです。

ここからは根拠など一切なく、完全に私の推測に過ぎませんが、
エスクリの本当の強みは、①DVxのような卓越した営業力を持っているか、
②立地のような小さな優位性を数多く積み重ね、大きな優位性としているか、
の、どちらかではないだろうか? などと想像しています。
No title
>では、エスクリの競争優位性はいったい何なのか?
>それは、私にはハッキリとは分かりません。

ゆうゆーさんは「知らないものには投資しない」んじゃなかったですか?
ただ単に過去の業績がよい中でPERの安いものを選んで投資してるだけじゃ、バフェットやリンチは決してそんなことはしませんよね。
「営業力ありそう」と憶測するのは、ゆうゆー投資の哲学にそぐわないんじゃないでしょうか?
Re: No title
例えば、Aさんは過去数回のテストで全て90点以上を取っており、
Bさんは過去数回のテストで、全て50点以下だったとします。
次に両者がテストを受けたとして、どちらが高い点数を取ると思いますか?

おそらく誰でも、Aさんを選ぶものと思います。
ただ、AさんのBさんに対する競争優位性は何なのかは、分かりません。
(もともと天才なのか、Bさんの5倍勉強しているのか、・・・)

ですが、何らかの競争優位性を持っていることは、疑う余地はないでしょう。
(もちろん、優位性の中身まで知っていた方がより良いことは間違いありません)

「長期安定成長株」という言葉がこのブログでは再三出てくると思いますが、
私が長期安定成長株に好んで投資する理由は、
不況耐性や、競争優位性の存在がその実績から確認できるからなのです。

「知らないものには投資しない」と一言で言いますが、
投資先の全てを知っている人など、おおよそ存在しないでしょう。
バフェットやリンチだって例外ではないはずです。
結局、どこにボーダーラインを引くかの問題です。

私のボーダーラインは、バフェットやリンチよりは低いことは否定しません。
それも、投資家としての技量の一つなんだと思っています。
No title
エスクリが何らかの優位性を持っているのではないか、ということは私も思いますが、それは絶対的な優位性ではないということが言いたかったことです。

優位性の話よりも私は500億円の壁の方が遥かに重要な課題だと思いますが、この件については如何でしょうか?

中計を見ると既に多角化を考えています。
出店余地が豊富にあるのであれば、このようなことは考えないので、成長株として見るとこの問題は深刻です。
エスクリに限らずウエディング銘柄の株価が低評価なのは、この辺りに原因があるのではないかと思うのですが。

あと、私のスタンスとしては、エスクリがベストブライダルくらいまで成長できるのではあれば、今からの投資でも株価は3倍になりますので、投資としては問題ないと思っています。
バフェットは競争優位性がわからないものには決して投資しません。なんだかわからないけど競争力ありそう、たぶん、数字がいいから、で投資するなどバフェット流投資ではあり得ないのです。

バフェットはその企業の競争優位性がどこから来て何によってもたらされているかを長年の分析によって全て知り尽くしているからこそ成功を収めたんでしょう。

違いますか?
ブライダルのはやりすたり
こんばんは。はじめまして。
ヨコから失礼します。

ブライダル業界に関しては、流行があります。

1980年代~バブル時代には派手婚。
1990年代にはジミ婚。
2000年代にはナシ婚(挙式をしない)、おもてなし婚。
2010年代には絆婚(参列者も含めて)と。

それに伴い、結婚式場も大型ホテルからゲストハウスなどに変わってきています。

T&Gもそうですが、ワタベウェディング(海外リゾート婚を初めて導入した会社)も売上が400億円台で停滞し、利益がほとんど出ていないような状態です。
(もっとも、円安傾向なども影響しているのですが)。

あと、沖縄に進出してうまくいくかどうかが大きな判断基準になるかもしれません。(地域ごとの微妙な、だが見過ごせない文化や風習の差異を、克服できるかどうか)
No title
>>バフェットは競争優位性がわからないものには決して投資しません
繊維会社のパークシャーやUSエアーの優先株購入とか、
明らかに優位性が無いものに投資して失敗してますね。

>>長年の分析によって全て知り尽くしているからこそ成功を収めたんでしょう。
リーマン前に石油価格が1バレル100ドルを超えているときに、
コノコフィリップスに投資して失敗したとバフェットがインタビューで言っていました。
バフェットもなんでも知り尽くしているわけではないですよ。

>>違いますか?
ドヤ顔で適当なバフェット流投資を語りたいのなら、
チラシの裏にでも書かれておかれたらどうでしょうか?

Re: No title
AKIさん、こんにちは。

そもそも「500億円」という数字の根拠が、私にはよく分からないのです。

A社は500億円で頭打ち、B社も500億円で頭打ち、C社も500億円で・・・
ということであれば、単純にA社がB社やC社からシェアを奪うことができれば、
A社は500億円の壁を破れるはずです。

それができないということは、①A社もB社もC社も大した競争優位性が無いか、
もしくは②ブライダル業界の異なる領域で勝負している、と推測できます。

②を考えると、例えばA社はゲストハウスで、B社はホテルで、C社は専門式場で、
という風に勝負エリアを棲み分けており、そのそれぞれに500億円という壁がある、
というのであれば、なんとなく納得できます。
が、もしそうだとしたら、全てのスタイルで勝負しているエスクリには無い壁とは
言えないでしょうか?

①だとしたら、これは競争優位性の話に戻ってしまいますが、
既存企業で市場が飽和状態な中を、エスクリは高成長できているのですから、
A社やB社やC社からシェアを奪う力はあるのだ、と考えられないでしょうか?

①、②どちらにしても、エスクリはそれを打破する力があるのではなかろうか、
と、私は考えています。

多角化については、一概に出店余地が少ないから、とも言い切れないと思います。
例えばALサービスだって、「かつや」だけで十分な収益が見込めるし、
出店余地もまだまだあるでしょうが、天ぷら屋などの業態にも着手しています。
たぶん、遠い将来のことを考えているのではないでしょうか?
Re: タイトルなし
名無しさん

分かりやすく言えば、競争優位性の存在自体が明らかでない場合を60%の自信、
競争優位性の存在は明らかだが、それが何かは分からない場合を80%の自信、
競争優位性の存在も、その内容も分かっている場合が95%の自信であったとして、
バフェットは95%の自信がないと突っ込まないのに対し、
私は、勝率60%では突っ込めないが、80%は成功する自信があれば突っ込む、
という違いだと思います。
(あくまで例えですので、80%などといった数字は適当です)

このあたりが、バフェットと今の私の投資家としての技量の違いであり、
長期的なパフォーマンスの違いとなって表れてくることでしょう。
ちなみに昔の私なら、60%~70%程度の自信でも突っ込んでいました・・・。

また、バフェットならこうするはず、リンチならこの銘柄は買わないはず、
といった論法は、私は好きではありません。
私はバフェットのコピーではなく、自分の考え方を持っているからです。

バフェットの行動がどうであろうと、合理的に正しいものは正しいし、
間違っているものは間違っています。
名無しさんには、「バフェットならこうしないのでは?」という論法ではなく、
ぜひ、合理性の観点での質問をお願いしたいところです。
Re: ブライダルのはやりすたり
がじゅ丸さん、はじめまして。

ハード面に関して流行り廃りがあるというのは、その通りだと思います。
エスクリの岩本社長も同じことをおっしゃっていますね。

岩本社長は、流行り廃りに左右されないためハード面での集客に頼らず、
ソフト面での集客を目指していると話しています。
結婚式のスタイルを固定しない、というのも、この言葉通りの経営戦略です。
エスクリは、流行というリスクをかなりヘッジできている方だと思いますが、
それでもやはり一つの懸念材料には違いありません。

ただ、流行り廃りといってもゲーム業界のような目まぐるしい変化ではなく、
長年かけて緩やかに変わってゆくような性質のものですので、
今年や来年といったスパンで気にすることではないと思いますが、
沖縄への出店が上手くいくかも含め、今後のフォローは必須ですね。
Re: No title
「横槍すいません」さん、フォローありがとうございます。

バフェットも最初から今のような投資哲学を持っていたわけではなく、
数多くの失敗を経験し、今の投資哲学に辿り着いたのでしょう。

私も、たとえ失敗するにしても人まねをするのではなく自分の頭で考え、
納得した形で自分なりの投資哲学を築き上げてゆきたいものです。
↓のような分析をされている方がいました。

http://toshihironj.blog.fc2.com/blog-entry-209.html

エスクリの優位性はリクルートとの繋がりということですかね。
Re: タイトルなし
アスカロンさん

エスクリを詳しく分析していたっしゃった方がいるのですね。
ぜひ参考にさせていただきます。
(ただ、ざっと読むだけでは私の頭ではちょっと理解できませんでした・・・)

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