ルールを作ることと、それを守ること

こんにちは、ゆうゆーです。

私は銘柄分析の中で、PERの適正水準というものを定めています。
例えば、先日売却したトレファクならPER12.6倍~18.9倍が適正水準、
ALサービスならPER16.3倍~24.5倍が適正水準、といった感じです。

そして、PER適正水準の下限よりもPERが低い場合に買い対象とし、
PER適正水準の上限よりもPERが高くなった場合に、売り対象としています。
「この上限を超えたら必ず売らなければならない」ということではなく、
「この上限を超えた場合は売ってもいいですよ」という意味の数字ではありますが・・・。

さて、私がどのようにこのPER適正水準の範囲を決めているかと言いますと、
勘のいい方はもう分かっているかもしれませんが、
まず、「成長率=適正PER」という考え方を基にしています。

例えば成長率15%の銘柄の場合、適正PERは15倍となり、
成長率20%の銘柄の場合、適正PERは20倍となります。
この成長率の求め方というのもなかなか難しいテーマではありますが、ここでは省略します。

そして、銘柄毎に自信の大きさや、想定が外れた時のリスクの高さを考慮し、
その適正PERを適宜、修正します。
例えばALサービスの場合、リスクは極めて低いと判断していますので、
適正PERを20%増しにしています。

そうやって算出された「修正後の適正PER」を0.8倍したものを適正水準の下限、
1.2倍したものを適正水準の上限に設定している、というわけです。

さて、ここで一つ疑問が出てくると思います。
適正PERの計算まではいいとして、
そこに0.8と1.2を掛けてそれぞれを下限と上限に設定しているのには、
何か意味があるのでしょうか?
0.8倍と1.2倍ではなく、0.7倍と1.3倍ではダメなのでしょうか?

結論から言えば、0.7倍と1.3倍でも全く問題ありません。
また、0.5倍と1.5倍でも構いませんし、0.9倍と1.1倍でも構わないでしょう。
さらに言えば、リスクを極力抑えたい方は0.5倍と1.0倍としてもいいですし、
割高リスクを覚悟で成長の恩恵を最大限受けたいのならば、
1.0倍と無限大(上限なし)にするのも、一つのやり方だと思います。

また、一時に全て売り切るのではなく、10%上がるたびに一部売却するなど、
数回に分けて売るようなルールにしてもいいと思います。

というのも、はっきり言ってこのような細かな投資基準の差が、
長期的な投資パフォーマンスを大きく左右するとは、到底思えないわけです。

この程度の投資基準の違いは大して重要ではなく、
「(自分が考える)適正水準よりも割安な時に買い、割高になった時に売る」
という要点を押さえてさえいれば、PER何倍で売ってもいいと思っています。

PER20倍で売ったって、PER30倍まで持ち続けていたって、
どちらがより良い選択だったかは、どうせ結果論でしか分かりません。

前者は売れる機会が多くなる分、リターンは小さく、
後者は売れる機会が少なくなる分、リターンは大きくなる、
ただそれだけの話です。
おそらくどちらも、期待値としてはほとんど変わらないと思います。

ちなみに、これは買い水準を決める際にも言えることで、
買ってよいPER水準を低く設定すればするほど、
買えた場合のリターンは大きくなる代わりに、買える確率が下がります。
期待値としては、あまり変わらないでしょう。

今回、私はトレファクの予想PER19.4倍(ゆうゆー予想)で売ったわけですが、
この水準で売ったことが正解だったのか?
はたまた、30倍まで持ち続けるべだったのか? と、あれこれ考えたところで、
結論は出ないのではなかろうか、と思います。
後になってからなら何とでも言えるでしょうが・・・。

PER何倍で売ったって、別にいいんですよ。
みなさんが売却するのに合理的だと思える価格であるのなら・・・。

それよりも、もっと重要なことがあります。
それは、あらかじめ「こうなったら売る」という売却基準を決めておいた上で、
そうならないうちは岩のように忍耐強く我慢しておき、
いざそうなった時には躊躇なく売ってしまえ!
ということです。

これは、成長ストーリー崩れによる売りであろうと、
割高による売りであろうと、同じです。

もちろん、場合によっては投資基準の見直しも必要になるでしょうが、
「投資基準に従うか否か」まで見直す必要はありません。
投資基準を守れないのならば、投資基準を定める意味などないのですから。

また、投資基準を定めずにその時の感覚に頼って売買しているようでは、
よほど強靭なメンタルを持っていない限り、なかなか上手くいかないでしょう。

株価が岩のように動かない間は、他のもっと動きの良い株に乗り換えたくなり、
いざ急上昇し始めたら、岩の心電図の時の感情などすっかり忘れてしまい、
ちょっとでも高い株価まで引っ張りたい、と欲が出てきてしまうのが、
普通の人間の心理ってものではないでしょうか?

相場急変時にとっさに思いついた売却水準よりも、
相場が穏やかな時に冷静に考えておいた売却水準の方が、
ほとんどの場合において、的確であるような気がします。

パチンコ、パチスロのようなギャンブルだって、
上手な人は、「○○円だけ突っ込んで当たらなかったら止める」といった
明確な自己ルールを持ち、それを守れる人ではないでしょうか?
そのルールが、○○円ではなく△△円だったとしても、
そんな細かな違いは大した問題ではない、と思いますよね。

一方、下手な人は「もう少しだけ、、まだいける、、、」と粘った挙句、
気付けば資金を溶かしていた、というパターンが多いのではないでしょうか?
私はパチンコやパチスロはやりませんので、想像で言っているだけに過ぎませんが・・・。

真の投資家は明確な考え方に基づいて市場や世界に向かっていく。
彼らは必要以上に悲観的でもなければ、不合理なほど楽観的でもない。
ただ論理的で合理的なのである。
【ウォーレン・バフェット】


今回の私のトレファク売却劇に注目されている方々に、私は言いたいです。
ゆうゆーさんはPER何倍でトレファクを売却したとか、
その後下がったから判断は正しかったとか、そんな表面的な部分ではなく、
「PER12.6倍以下で買い、PER18.9倍以上で売り」という鉄壁の投資基準を
あらかじめ決めておき、その投資基準を守り抜いて売買できた点
にこそ、
注目していただきたいですね。
参考記事:銘柄分析[3093 トレジャー・ファクトリー]

仮に、この銘柄の売り基準をPER25倍以上に置いている方が、
今回の暴騰局面でもし売っていたとしたら、それは失敗取引ということです。
たとえ3680円の最高値で売れて、今は3230円まで下がっていても、
これは失敗取引であり、恥ずかしい取引をしたという事実は決して覆りません。

結果ではなく、過程こそが大事!

今までに何度も繰り返していますが、これがゆうゆー流の考え方です。
参考記事:結果主義から卒業しよう
    :結果を気にしないから、良い結果が出せる


投資パフォーマンスの最終的な明暗を分けるのは、
PER20倍で売ってしまうか、30倍になるまで持ち続けるかの違いではなく、
根拠に基づいたルールを作り、それを守り抜けるかどうかにかかっている
そんな風に思えてなりません。
もしルールそのものが悪ければ、それに気づいた時点で変えればいいのです。

ただ、例外として「自分は売買センスがある」と自覚している人は、
投資基準なんて決めなくても、その場で臨機応変に対応すればいいと思います。
私の場合、「売買センスがない」と自覚しているため、
当記事は私と同じような方向けの記事だと考えておいてください。

コメント

No title
素晴らしい。
一つ一つの文章と、色やフォントを変えて強調する文章、そしてそれらを書くタイミング。

今回の投稿文章は最初から最後まで絶妙ですね。それに加えて、無駄がない。

ゆうゆーさんの投稿文章は全部読みましたが、今回の投稿文章が一番かもしれません。
保存します。永久保存版。最近文章を保存する事があまりなかった。何年ぶりだろう?

ゆうゆーさんの文章を読むのはとても楽しいです。
本当に良い投資家になれると思いますし、ここのブログの読者から良い投資家が何人も輩出されるでしょうね。
Re: No title
MEANINGさん、こんばんは。

いつも温かいお言葉ありがとうございます。
そんな風に言ってもらえると、書いた記事も浮かばれますね(笑)

半分は気持ちだけで書いているような文章ですが、
その気持ちが読者様に伝わってくれているのかな? と思います。

本当に、自分自身を含め、
このブログの読者様から良い投資家が出てきてくれるならば、
こんなにやりがいのあることはありません。
そんな将来を夢見て、これからも書き続けたいと思います。
No title
ゆうゆーさん、こんばんは。

ルールを守ることが大事である点、
私も共感いたします。

一方でそのルールがきちんと自分の中で腹に落ちたものでないと、
当たり前の話なのですが、直ぐにルール破りをしてしまい、
「恥ずかしい」取引になってしまうということですね。

私もかつては自分がルールだと思って運用してきた取り決めを、
株価の動向で簡単に反故(ほご)にして、
利益を出せたからよいことにしようという見当違いの対応をしてきたことがあります。

自分でない他人が算出した目標株価を鵜のみにして、
その株価に近づいてくると、
それなりに利益も乗ったし、利益確定だぁ~なんてことも、
実際にありました(笑)。
今思うと大変恥ずかしい話です。

ゆうゆーさんのような芯のしっかりされた投資家のブログ読者としては、
大変恥ずかしい限りなのですが・・・。

しかし、私もゆうゆーさんを始め、読者の皆さんから学ばせて頂くことで、
少しずつ今回の記事のようなことも意識を出来るようになってきました。

今はそれがより自分の自信の向上に繋がるように、
該当銘柄へのルールを決める際の、
質の向上に努め、その質を徹底的に見極める努力をすることで、
より頑固なルールとして運用出来るように心掛けていきたいと思いました。

いつも色々なことを学ばせて頂きましてありがとうございます。

ちなみに私はトレファクの売却の際にも、
その利益幅や妥当性というより、
きちんと自分の決めた適正PERを鑑みて、
この高騰局面でしっかり利益確定をされた、
そのルール遵守性に惚れ込みました。
No title
ゆうゆーさんこんにちは.
トレファクの件は素晴らしい意志の強さですね,尊敬します.
私もPERを基準に売買していますが,まだまだ意志が弱くてだめです.(以前よりはルールを守れるようになりましたが)

たとえば,トレファクは数年先まで成長率15%を見込んでいますが,
リスクはあまりないと思っているので,PERは22倍まで持つつもりでいます.
EPSは四季報の数値を使っているので165.6円×22≒3,645円.
先日この値を超えましたが,逆指値を出していなかったので売れませんでした.

また,割高になったら売って,適正値になったら買い戻そうと思ってはいますが,
買い戻す価格が決められずにいます.たぶんPER=15倍以下にはなりそうもないので...

トレファクはNISA口座でも持っているので,こっちの判断も悩んでいます.
NISAなので当分売らない気持ちもありますが,
やっぱり売却基準に従って売るべきだとも思いますし.

NISAは利益が出ないとメリットがありませんが,
少しの利益ではメリットを生かせないので,
リスクをとって高成長企業を追加しようと検討中です.
Re: No title
まるのんさん、こんにちは。

そうですね、「決めたルールを順守する」ということも、
そのルールに強い信念があってこそのものですよね。
信念なきルールを、いつまでも守り続けることなどできませんからね。

忍耐強く持ち続けるというのもそうですが、
その行為に、根拠に基づいた信念があってこそ可能なんだと思います。

もちろん、私もこのような記事を書いているということは、
ルールを破るという過ちを何度もやってきたからに他なりません(笑)

読者のみなさまは、私のことを「ルールをきちんと守れる人」だと
思われているかもしれませんが、
こんな記事でも書いて自分に言い聞かせておかなければ、
ついその場の判断で売買をしたくなってしまう、弱い人間なんです。

私のブログやまるのんさんのブログを通し、
本人と読者のみなさまが、一緒に成長してゆければいいですね。
Re: No title
RoSさん、こんにちは。

日中仕事をしている方だと、リアルタイムで売却するのは難しいですから、
余裕で売却基準を超えるような株価になるまで待ってもいいと思いますよ。
一瞬のチャンスも逃してはダメ、というような性質の投資ではないですからね。

ただ、最初から買い戻しありきで考えているのであれば、
まだ売らない方がいいのではないか、とも思います。
今後、買い戻せる値段まで下がってくる保証など全くありませんから・・・。
いつか下がってくるとしても、それは何年も後かもしれません。

私の場合、もし買い水準まで下がってきた場合には買い戻しを考えますが、
下がってこない場合は別に買い戻せなくてもいい、と思って売りました。

NISAの判断も難しいですよね。
ですが、冷静に考えればNISAって税金面で得をするだけのものです。

例えばトレファクを売った場合、売ったお金で他の銘柄を買うと思いますが、
税金分の得を考慮してもなお乗り換えた方が儲かる、と判断したのなら、
それは乗り換えるのが合理的というものではないでしょうか?
PERの考えについて
私も、今回の記事はプリントアウトしました。
そもそも、私はPERは漠然としか気にしていませんでした。
素晴らしい、考え方だと思いました。

そもそも、ゆうゆー様の成長率とはどこの数字で考えられますか?
私は、売り上げと経常利益と1株利益で毎年の比較で考えますが。
1株利益は、特益・損は考えませんが。
Re: PERの考えについて
coco2banさん、こんにちは。

プリントアウトまでしていただき、光栄です。
そもそも、PERのみを基準にするというのは完全に合理的というわけでは
ないと思いますが、シンプルかつ具体的な基準を決めるにあたり、
PERという指標は非常に有用ではあると思います。

成長率は私の場合、売上高と営業利益の過去3~7年くらいの伸び率と、
あとは常識を踏まえて想定しています。
参考までに、ROEがどのくらいで推移しているかも見ています。

が、成長率をいくらにするか? という問題は、
○年後のEPSはいくらになるか? と聞かれていることと同じ意味ですので、
それが分かれば苦労しないよ・・・と答えたい気持ちはやまやまです(笑)
一つだけ文章で気になる点がありましたのでコメントさせてください。
パチンコの上手な人は投資額を決めて打つのではなく、期待値が出る(自分の期待する時給)ならいくら嵌っても機械のようにブレないように打つだけです。 目先の利益ではなくトータルの利益を追求するのがパチプロです。
Re: タイトルなし
やまさん、こんにちは。

ご指摘ありがとうございます。
そうなんですね、ちょっと想像で書いた部分もあり失礼いたしました。

いずれにせよ、明確な自己ルールを持ってそれを守り抜くというところは、
パチンコにせよ株式投資にせよ、成功している人の共通点ですね。

管理者のみに表示

トラックバック